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登山や旅行、たまに動画編集をつらつらと。

【JAN・神奈川岳連共催】ミニ・アバランチナイトに参加してきた

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タイトルの通り、ミニアバランチナイトに参加してきました。

 

今回はその報告と内容の詳細についてです。

※ ブログへの掲載許可は出ましたが、スライドの内容については写真撮影許可が降りなかったため、文章のみの記事となりますことをご了承ください。

※文字起こしに関しては実際にお話頂いた内容をできる限り忠実になぞる形で記載していますが、言い回し等若干の誤差があることを御許しください。

アバランチナイト

日本雪崩ネットワーク(Japan Avalanche Network、通称JAN)が各地で開催している雪崩安全セミナーのこと。雪崩に関する基礎的な解説や実際に起きた事例等を紹介し、初心者には雪崩の危険を周知する機会になるこのセミナー。JANはこのアバランチナイトに関して、あくまでセミナーであり講習会とは位置付けていないようですので、ちゃんと学びたい人は講習会への参加が推奨されます。

 

ミニアバランチナイトはこのアバランチナイトの姉妹版で、平日の短い時間でアバランチナイトでの講話内容を凝縮した形のセミナー。各地で実施されており、今回は神奈川県山岳連盟との共催によるミニアバランチナイトへ参加してきました。

 

講師は登山ガイド・スキーガイド共にステージ1をお持ちで、日本雪崩ネットワークのアクティブメンバーでもある服巻辰則さん。

その道のプロが、雪崩に関する取っ掛りの部分をお話して下さるということをJANのHPで知り、即参加を決めました。

ちなみに、先日12/1に青山学院大学で開催された雪崩に関する講演会がありましたが、山に行っており参加出来ず……。早い段階でそれが分かっていたのもあって、ミニアバランチナイトにせめて参加しておこうと手が動きました。

 

 日本雪崩ネットワークについて

その名の通り、雪崩に関する安全情報を発信し、包括的な雪崩安全対策に取り組んでいる非営利団体です。

登山者・BCスキーヤー&スノーボーダー問わず、雪山利用者に対して下記の4つの取り組みをしておられます。

・雪崩教育

実地でのビーコン操作や埋没者の捜索を実地で行うセイフティキャンプ、ガイドやプロ向けにカナダの雪崩協会と協力してトレーニングスクールを実施している。

・リソース

リソースに関しては、雪崩に関する書籍を出版されているとのことで、やはり下記の書籍をご紹介いただきました。

 

 JAN主催のベーシック・セイフティキャンプやアドバンス・セイフティキャンプ参加においては必読とされている書籍です。

・雪崩情報

JANのHPでは、現在4つのエリアに於いて雪崩の発生可能性に関して一目で分かるような情報の発信をしているようです。

 

・事故調査

 上記のような活動をするにあたり、事故現場に赴きその原因を調査している。HPから調査についても閲覧可能。

 

雪崩に巻き込まれる人は登山者?滑走者?

 

いきなりこんな質問が出てきました。

 

雪崩というと、山スキーヤーがよく巻き込まれていたり、滑走の衝撃によって雪崩が誘発されるようなイメージを持っていました。

 

ですが、現実はかなり異なるようです。

 

1991年から2019年の日本における雪崩による死者数の割合を提示していただくと、

 

登山者……47%

 

滑走者

 BCスキーヤー……34%

 BCスノーボーダー……9%

 

その他……10%(内訳までメモできなかった)

 

というわけで、滑走者の合計よりも登山者が雪崩に巻き込まれて亡くなっている現実を知りました。マジか。。。

この数字の原因としては、登山者の方がひとかたまりになって行動することが多いので、必然的に巻き込まれる人数も多くなってしまうことが考えられるといいます。

 

例として出していただいたのは、今年の4月末の涸沢カール・ザイテングラート横での表層雪崩。登山者が30名ほど流されましたが、かなり表面だけのものだったようで規模は大きいものの死者は出ませんでした。

 

実はこの雪崩、発生した現場に僕は居合わせておりました。

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ザイテングラート横の表層雪崩。涸沢のテン場は無線が飛び交いざわついていた。

雪崩発生直後のザイテングラート。

登山者がかなり流されてしまっているのがわかります。

この日の登山はこれを受けて中止し、涸沢に停滞することになりました。

 

登山者だから全然関係ない、というのは全くの誤りで、

BCをやらなくても雪崩について知っておく必要があると痛感した出来事です。

 

 

雪山の危険

 

日本雪崩ネットワークでは「管理されていない斜面」に潜む危険についての啓発キャンペーンを行っているようで、

「ロープの向こう側」という題目で啓発がなされています。

 

雪崩はもちろんのこと、深雪での行動、樹木のポケットへの転落・沢底への転落、がけからの滑落、立木や岩など障害物への衝突などが挙げられており、管理下からロープ一本向こう側へ行っただけで、そこは様々なリスクの潜むまぎれもない雪山であることへの理解を求める内容となっています。

 

 雪崩の基礎

☆雪崩の種類

雪崩には大きく分けて2種類があります。

 

◎点発生雪崩→雪の結合がもともと弱い場合

 ・降ったばかりのサラサラの雪

 ・雨で十分に濡れた雪

 ・林間(樹林帯)でも発生する

 

雪崩を避けるために樹林帯へ、ということがよく言われるが

点発生雪崩に関してのみ言及すれば、それが通じないこともあるということを

知っておくべきだといいます。

 

◎面発生雪崩

 ・広い範囲が同時に動く

 ・多くの雪崩事故に関係している(点発生雪崩に比べ規模が大きくなりやすい)

 

☆積雪の特徴

 

積雪というのはその名の通り雪が積もってできているものです。すなわちそこには層構造が形成されており、厚み・硬さ・結合具合・雪温などを観察することによって、今後その斜面で雪崩が起きやすいのかなどを判断する手がかりを得ることができます。

 

雪の層を薄くスライスして光に透かして見ると、色の濃いところと薄いところが出てきます。濃いところは密度が高く、締まっている雪。薄いところはスカスカの雪。前者は当然結合度合いが強く、後者はあまり結合していないと言えます。これをグラフ化していくと、結合度合いの弱いスカスカの雪の層があることがわかります。ここを弱層と言い、下の雪質が固いものである場合は弱層より上の層は衝撃など何らかの原因で亀裂が入り弱層が破壊され、滑り出していくのです。弱層より上の板状の性格を持った層をひっくるめてスラブと呼んでおり、このスラブが形成されているかを観察することが雪崩を予見するための大きな手掛かりになります。

 

☆雪崩による死亡事故の原因割合

 

75%が窒息、24%が流されていく中での障害物との激突によるもの、1%が低体温症とのことです(隣の部屋がうるさすぎてソースが聞き取れなかった)

 

☆埋没後の生存可能性

 雪崩に埋没して15分以内に救助しろ、という風に昔から言われていましたが(スイスの事例では15分を境に生存率が80%から一気に低下)、

カナダの事例(埋没からの経過分数と生存率のグラフ、右肩下がり)ではそれが10分の時点で起きています。これはスイスとカナダの雪質の違いによるもので、スイスは乾いたサラサラの雪が多くカナダは沿岸性の湿って重い雪が多い。雪崩の雪もその分重くのしかかってくるのでこの時間差が生まれていると言われているのだそう。

 

というわけで、カナダの時間の方を取っておいて10分以内に、と最近は言われるようになってきたようです。

 

 雪崩を知るということの重要性

 

山を初めてそれほど年の経っていない僕は、「雪崩」というものがあまり身近な存在という実感がありませんでした。

冬山を始めてみるという人も、最初はスノーハイクくらいのゆるい雪山に!という感じがあると思います。

「雪山」と一口に言っても、その幅というものは広いです。

例えば、山が一面樹林帯で覆われているような山域や、スキー場がすぐ近くにあって山頂までの行動時間が短いところの場合は、よほどの降雪がないと雪崩の発生確率はかなり低いと思います。

ですが霧ヶ峰などでも雪崩は発生しているので絶対大丈夫ということはないのですが、少しでも冬山を始めようと思っている人は、雪崩というものがどんな条件で起こって、どういう装備が必要になって、ということに対してもっと興味関心を向けていったほうがいいんだろうな、という感想を抱きました。これは自戒の念も含めてです。

 

今回のミニアバランチナイトに参加したことで、劇的に知識が向上したとかいう話ではありませんが、捉え方は若干変わったかなという印象です。

 

冬山シーズン真っ只中になりましたが、今年は暖冬で

今年は雪が少ないおじさん「今年は雪が少ない」

って年になりそうです。

 

春にかけて残雪期になってくると、雪崩の危険性も高まると思います。

読んでくださった方の雪崩に関する興味関心が少しでも上がったら幸いです。

僕もこれからたくさん勉強していきます。

そして、最高の雪山で最高の笑顔を湛えましょう。

 

山では笑っていたいもんね。

 

ってことで、自戒の念を込めて今回の記事は終わりです。

では。